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2014-05-13      閲覧数(2124)

コラム:春闘で注目される「賃金二極化」、増税で予想外のリスクも

アベノミクス2年目の動向を占ううえで、今年の春闘が例年以上の注目を集めている。経団連は15日、6年ぶりにベースアップを容認する指針を発表し、世の中には「給料が上がる」との期待感が広がり出している。

だが、中小・零細企業の賃上げは依然として厳しそうで、増加する非正規雇用を含めると、「賃金の二極化」が今年の特徴にな りそうだ。そうした中で迎える4月の消費増税後に、政府の見通し通りに景気の落ち込みが短期・小幅で済むのかどうか。大いなる実験の色彩が強いが、駆け込 み後の反動減が予想外に大きくなるリスクがあると指摘したい。

<大企業と「その他」で開く賃金格差>

経団連は2014年の労使交渉の指針で、ベア容認の方針を打ち出した。すでに連合が定期昇給維持(2%の賃上げに相当)と1%以上のベアを求める方針を示し、一見すると労使の呼吸が「ベア容認」で一致しているようにも見える。

ただ、日本企業はここ数年間で同じ業種でも各社の収益格差が拡大しており、経団連は実際の妥結水準について、各社ごとの判断に任せるとのスタンスだ。

このようなベアをめぐる動きを受け、今年は広く賃上げが実行されるのではないかとの期待感が一部で広がっているようだが、現実は甘くないようだ。

春闘で賃金水準が決まる雇用者数は、大企業製造業を中心に雇用者全体の10%台にとどまる。残る大多数は、中小・零細企業 の正社員や非正規雇用者だ。中小・零細企業の中には、円安による原材料価格やガソリンなどエネルギー価格の上昇で、思うように収益が好転していないところ も多く、大企業並みに賃上げできるところは限定されそうだ。

また、正規社員との所得格差が大きい非正規社員は、増勢を続けている。総務省が昨年7月に発表した2012年の就業構造基本調査では、非正規社員が2043万人と2000万人の大台を初めて突破し、全体に占める割合も38.2%と過去最高を記録した。

この40%近い非正規雇用の人たちの所得水準が上がらないと、厚みのある階層で所得が増え、消費増につながるという好循環を生み出すパワーが盛り上がらない。

春闘でベアが決まる企業が増加したとしても、このままでは賃上げを獲得した「大企業社員」と目立った賃上げがない「その他の雇用者」という「賃金の二極化」が鮮明になると予想する。

<注目される低所得階層の増税インパクト>

ここで問題になるのが、4月からの消費税率引き上げの影響だ。5%から8%に増税され、個人消費に影響が出て、国内景気を下押しするのかどうか──。

政府や大企業経営者の多くは、昨年からのアベノミクス効果で景気の好循環が始まっており、消費増税前の駆け込みが起き、4月以降はその反動でいったん景気が落ち込むものの、7月以降はそこから立ち直って秋以降は、巡航速度のプラス成長に復帰するとみているようだ。

実際、賃上げが実施されそうな大企業の正社員を中心に消費が旺盛であれば、個人消費全体も堅調なモメンタムを失わずに済むという予想がエコノミストなど専門家の中でも少なくない。

だが、その楽観的な見通しが実現するのかどうか、疑わしい点も少なくない。例えば、2012年の家計調査年報によると、年収486万円未満の世帯が全体の40%を占め、486万円以上828万円未満が40%、828万円以上は20%という構成比になっている。

このうち486万円未満の階層は、大企業正社員以外の人たちが多く占めていると予想され、賃上げがあまり実現しない中で消費増税が実施され、支出を抑制する可能性がかなりあるとみられている。

<4月以降に跳ね上がるCPI、消費抑制効果に>

また、高所得の階層に属する人たちにも影響する予想がある。それは消費者物価指数(CPI)が消費税引き上げ分を控除した実質ベースで発表されるのではなく、増税分が加わった名目ベースで示されるという点だ。

3%の増税でCPIは2%程度上がると日銀などは試算しており、今のペースでCPIが上がっていけば、4月以降のCPIは前年度比3%台の上昇となるはずだ。

複数のエコノミストによると、日本の消費者は名目の物価上昇率に影響されやすく、短期的には3%の物価上昇で3%程度の消費を抑制する展開が予想できるという。

さらに足元までの自動車や大型家電の販売状況をみると、消費増税前の駆け込み需要が想定を上回って出ている可能性がある。政策担当者の中には、駆け込みの反動を抑制するために各種の政策対応をしているため、反動は小さくて済むとの見通しを示す声が多い。

しかし、そうした政策対応にもかかわらず、駆け込みが大きくなっていれば、需要の先食いが発生しているということであり、増税後の反動減を抑制することは難しいのではないか。

実際に4月以降、個人消費がどの程度落ち込み、いつから回復し出すのか、不透明な要素が多く、正確に予測することは難しい。その意味で4月以降の消費動向とそれを起点にした景気全体の足取りは、「大いなる実験」とも言えるだろう。

政策当局の中にも、4-6月期の国内総生産(GDP)が前期比でかなりのマイナスになることは予想している向きがあるようだ。ただ、それが7-9月期も続くとなると、世の中の受け止め方は、ガラリと変わる可能性が出てくる。

「賃金の二極化」と消費増税が織りなす変化の動向を政府・日銀がどのように予測し、対応するのか。その動きを正確に把握できるかどうか、日本の経済ジャーナリズムも真価を問われることになりそうだ。